JBIBリレートーク
JBIBリレートーク
JBIBリレートークは、JBIB会員企業の社員がリレー方式で「生物や自然への個人的な想い」をつづったエッセイで、2009年9月から2010年10月まで連載したものです。
(あくまで個人的な想いであり各企業としての見解等を示すものではないことを
ご承知ください。)
リレートーク一覧
・COP10の秋、読書の秋(2010年10月1日更新)
・身近な自然に感謝!(2010年8月2日更新)
・Nature’s Call ~あぁ 自然の呼び声(2010年6月1日更新)
・私たちが食べつくす!?ボルネオの森(2010年4月16日更新)
・ジャングル大帝あらわる(2010年3月15日更新)
・屋上庭園の歩き方(2010年2月11日更新)
・ライチョウのユウウツ(2010年1月15日更新)
・サンゴのきれいな海に・・・(2009年12月14日更新)
・社宅でハニーフラッシュ!(2009年11月13日更新)
・霊山にしのびよるシカの食害(2009年10月15日更新)
・ジャンボタニシ(2009年9月28日更新)
COP10の秋、読書の秋 リレートーク11人目(2010年10月1日更新)
こんにちは、セイコーエプソンの平島と申します。生まれと育ちは長野県諏訪市、今は塩尻市在住。大学・大学院時代の東京での6年間以外はずっと信州暮らしです。信州は自然が豊富ですが、反面その自然を壊してしまう開発行為も数多く存在します。かつて蓼科高原から霧ヶ峰を通り美ヶ原高原に至る観光道路「ビーナスライン」の計画が持ち上がったとき、地元で反対運動が起きました。それは新田次郎の小説「霧の子孫たち」にもなりましたが、ちょうど小学生から高校生にかけての多感な時期ということもあいまって、ぼくの諏訪人気質形成に一役買ってくれたような気がします。諏訪人気質?反骨であったり、わが道を行くであったり、自然科学を重んじる、そんなところでしょうか。
前置きが長くなりました。今まで登場したみなさんから、自然の魅力的な姿や問題を抱えた姿の紹介など興味の尽きない話がありました。ぼくは少し趣向を変え、生物多様性に関係のある本の紹介をしたいと思います。生物多様性に直接関係している本と、直接的関係はないものの生物多様性を考えるときに大切なものを教えてくれた本、その2つの視点から取り上げてみましょう。
まずは生物多様性に直接関係した本から。
●大石正道:「生態系と地球環境のしくみ」、1999年、日本実業出版社
http://www.amazon.co.jp/dp/4534029217
ぼくが生物多様性を勉強するときに最初に読んだ本のひとつです。かなりわかりやすかったという記憶があります。生態系や生物多様性に関する個々の項目や用語などについて簡潔かつ具体的に説明してあり、入門書としてはよいのではないかと思います。
●小澤祥司:「マグロが減るとカラスが増える?」、2008年、ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/dp/4478005656
いろいろな生き物のつながりを見せてくれます。身近な話題を取り上げているので、生物多様性を学ぼうとする人にとって「わがこと」として、生物多様性を感じることができるのではないでしょうか。
●ヴァンダナ・シヴァ:「生物多様性の危機 精神のモノカルチャー」、1997年、明石書店
http://www.amazon.co.jp/dp/4380972534
生物多様性は先進国側から語られる、あるいは先進国の理論で語られる場合が多いと思いますが、本著は途上国(インド)から見た生物多様性という切り口で書かれ貴重な内容だと感じました。この本を読んで、自分自身の考え方やものの見かたが単一なものになっていないだろうか?と、常に振り返ることの大切さを学びました。
●石田秀輝:「自然に学ぶ粋なテクノロジー なぜカタツムリの殻は汚れないのか」、2009年、化学同人
http://www.amazon.co.jp/dp/4759813225
タイトルだけを見るとバイオミミクリー紹介本のように思えてしまいますが、技術や科学のあり方などについて追求しており、ものごとの考え方を学ぶのによい本です。著者の石田先生はINAX勤務から東北大学大学院教授へと転身された方ですが、著書はもちろんのこと、お話しがとても魅力的です。石田先生の講演の機会などあればぜひお聴きください。
●ローワン・ジェイコブセン:「ハチはなぜ大量死したのか」、2009年、文藝春秋
http://www.amazon.co.jp/dp/4163710302
かなり有名になったので、わざわざぼくが取り上げるまでもないかもしれません。が、やはり取り上げたい!原題は「実りなき秋」、名著「沈黙の春」を想い起こさせるタイトルですね。日本も含め世界各地で発生しているミツバチの大量失踪。その原因をサスペンスさながらに追います。いかにぼくたちがミツバチの働きに依存しているのか、自然をゆがめ酷使しているのか、その事実に愕然とします。これを続けると人間社会がどうなるのか、戦慄が走りました。
●花里 孝幸:「自然はそんなにヤワじゃない」、2009年、新潮社
http://www.amazon.co.jp/dp/4106036398
花里さんは信州大学の先生、諏訪湖が研究フィールドです。人間は自分たちが気に入った生き物だけに関心を持ち、自分に都合のよい自然を残そうとしているのではないか。ある側面だけしか見ない「自然は大切」が、実は生態系を壊している。そういったことを先生の研究成果とともにじっくりと語ってくれます。生態系全体のバランスを意識した行動をとることの必要性に気づかされます。生物多様性の本質に迫った本だと思います。
続いては、生物多様性や持続可能性といったものへの考え方、人間の生き方を問う本の紹介です。
●福岡正信:「自然に還る」、1993年、春秋社
http://www.amazon.co.jp/dp/4393741463
「粘土団子」で有名な福岡さんの著書、哲学的な内容も多いです。ぼくが福岡さんのことを知ったのは1997年、その言動を見聞きし自然の持つ力を考えるようになりました。そして何よりも、面白いおじいちゃん福岡さんにすっかり魅了されてしまいました。この本は自然農法の話を通じて、生物多様性というものを考えさせてくれます。同著者の次の本もオススメです。
「自然農法・わら一本の革命」、2004年、春秋社、http://www.amazon.co.jp/dp/4393741412
福岡さんは2008年に満95歳で亡くなられました、合掌。
●ヤン・アルテュス=ベルトラン:「HOME 空から見た地球」、2009年、ピエ・ブックス
http://www.amazon.co.jp/dp/4894447924
書名からも察せられるように、写真が中心となった本です。ある種の写真集と言ってもよいでしょう。記述内容は生物多様性だけでなく環境問題全般が対象となっていますが、生態系に関する部分の比重がかなり高くなっています。ページを見開くと、一つの事項をインパクトのある写真と簡潔でわかりやすく訴求力ある文章で表現しています。空から各地を撮影した今まで見たこともないような写真の数々は、地球で何が起きているのか、その原因は何なのかを雄弁に物語り、ぼくたちが知るべきこと、とるべき行動が見えてきます。オススメ!
●レイチェル・カーソン:「沈黙の春」、1962年、新潮文庫
http://www.amazon.co.jp/dp/4102074015
今さら持ち出すまでもありませんが。歴史を変えた本であり、環境問題を考えるときのバイブルのひとつです。生物のつながりを考えず、人間にとっての都合だけから化学物質を安易に使うと何が起きるのか、自らの調査に基づき描き出した「沈黙の春」は、自然や化学物質のことだけでなく、彼女の行動と人生を通して人間はどう生きるべきかを問いかけていると思います。
●アラン・ダーニング:「どれだけ消費すれば満足なのか」、1992年、ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/dp/4478870543
歴史上でもっとも豊かな文明の中身がクルマと巨大店舗、使い捨て経済と化学物質による汚染、これが私たちの到達点などであるはずがない。「足るを知る」哲学を受け入れ、人間中心の豊かな文化を選択しようではないか、と著者は提案します。京都・龍安寺のつくばいに彫られた「吾唯足知」はぼくの大好きな言葉ですが、それもあって大いに共感しました。
●ダグラス・ラミス:「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか」、2000年、平凡社
http://www.amazon.co.jp/dp/4582702279
社会で常識とされていること、それは本当に常識と言えるのか、現実と言えるのか。「経済は発展しなければならない」この考え方が、真の現実から目をそらさせる「現実離れ現実主義」の張本人だと著者は示します。経済とは何か、何が現実なのか、本当は幻想なのにそれを強固なものと思い込んではいないのか、いろいろと考えさせられました。
●手塚 治虫:「ガラスの地球を救え」、1996年、光文社 知恵の森文庫
http://www.amazon.co.jp/dp/4334722881
自然や人間性を置き忘れ、ひたすら進歩をめざす科学技術がもたらす悲劇。合理主義や生産至上主義で社会は疲れきってしまう。自然を見つめるまなざしの大切さ、命の尊さ。戦争や差別など絶対にあってはいけない。最後のメッセージとなった本著からは、自らの体験をふまえた手塚さんの思いがストレートに伝わり心に沁みてきます。手塚マンガを目にしたことのある人すべてに読んでほしい本です。
実は、リレートークで本のことを書こうと決めたあと、ちょっと焦ってしまいました。それは書店の環境問題や自然関連のコーナーの前にぼんやり立っていた時のことです。ほんの少し前、せいぜい1~2年前ですが、その頃は書店へ行っても生物多様性関連の書籍はとても少なく、正直なところ書店に並ぶ本がそのままオススメ本になってしまう、つまりは選択の余地があまりないと言っても過言ではなかったでしょう。ところが最近は数多くの書籍が並んでいます。最新のラインアップの中からのオススメ本か?と問われてしまうと自信がない、というのが焦った理由です。もちろん、まだまだよい本があります。
それぞれの本の魅力をお伝えするには稚拙な文章で失礼しました。本自体は素晴らしいものばかりです。気になったものがあればぜひ読んでみてください。
身近な自然に感謝! <ウエットランドと万葉の香りが漂う国分寺市>
リレートーク10人目(2010年8月2日更新)
リレートーク10人目 三井住友海上の藤野です。
これまでのリレートークを楽しく拝見させていただいています。さて、今回指名された私ですが、最近は大自然を満喫する旅行もしていない為、私にとっての身近な自然について書かせていただきます。
私の住んでいる場所は、JR東京駅から中央線快速で45分、新宿から30分の、国分寺市というところに住んでいます。「国分寺」という地名は、750年代末から760年代初に聖武天皇の命により建立された武蔵国分寺がこの地にあったことに由来しています。
今回ご紹介するのは、国分寺市にある“ウエットランド”についてです。国分寺市がある場所は、10万年前には多摩川の流路になっていたことなどとも関係して、“ウエットランド”が多い場所のようです。
まず、最初にご紹介するのは、国分寺市の東西を横切る多摩川の浸食でできた「ハケ」と呼ばれる国分寺崖線(高低差15メートル)からの湧き水です。この湧き水がでている地域は、「お鷹の道・真姿の池湧水群」と呼ばれ、環境省の名水百選にも選ばれています。
また、「真姿の池」の周辺には、尾張徳川の鷹狩の場所として使われ、湧き水でできた小川の横には雑木林で囲まれた「お鷹の道」という小道があり、散策を楽しめます。
次に紹介するのが「姿見の池」という場所です。
この場所は、「真姿の池」から北に向かって「ハケ」を登り、JR中央線を横断したところの恋ヶ窪と呼ばれる地域に位置しています。
恋ヶ窪と言う地名は、多摩川が流れなくなった後の窪地という意味だそうです。ただ、多摩川が流れなくなっても雨水や湧き水がこの窪地に集まり小川となっていたそうですが、 洪水などで発生した大量の土砂で小川が堰き止められ湖となり、その後、葦などが生い茂った沼という湿地帯になったそうです。江戸時代には、この湿地帯が開墾され水田として今で言う里山の形態をなして戦後まで続いたそうです。しかし、近年の宅地化で、道路の舗装、下水溝の整備で雨水が地下に浸透しなくなり、湧き水も出なくなり、湿地の水は干上がり、1965年頃には湿地の埋め立てが行われました。
しかしながら、その後市民からこの「姿見の池」周辺の湿地帯を出来るだけ昔に戻したいと要望が強くなり、国分寺市側も雨水浸透ますを周辺の住宅に設置するなどして、地下水の貯水量を高める取り組みをはじめ、そして1998年に「姿見の池」を昔のイメージにして整備を行いました。いまでは、姿見の池の周辺から湧き水がほぼ一定量でており、姿見の池には多くの野鳥が集まるようになっています。
そして3番目に紹介するのが、日立中央研究所さんの敷地(敷地面積約20万m2)です。日立中央研究所さんの敷地は、「姿見の池」から東に500メートルぐらい(正門までは1キロメートル)のところにあります。
研究所内にも数箇所の湧き水が出ているところがあります。この湧き水を利用して、池を作り、池を中心にした庭園が造成されています。この庭園が素晴らしく、一般の人にも春(4月)と秋(11月)にそれぞれ一日だけですが一般公開しています。また、研究所内には樹齢百年余の欅やヒマラヤ杉の大木。構内には約120種2万7千本の樹木が茂っていますが、中には化石期の植物といわれるメタセコイアなど珍しい植物もあります。こうした環境下、池の白鳥、マガモをはじめ、林に群れる野鳥は、コジュケイ、ムクドリ、シジュウカラなど40種を越えているそうです。(一般公開の日は、日立中央研究所のHPに掲載しています。)
下の地図は、文中で紹介した国分寺の“ウエットランド”の場所を示した図です。
午前半日あればゆっくり散策ができ、湧き水を中心にした小さな里山と万葉の世界が垣間見れるかもしれない(少し無理があるか?)武蔵国分寺の歴史に浸ることができますので、是非、国分寺にお立ち寄ください。
次のリレートークは、いつも柔和な表情と穏かな声でお話をされますセイコー・エプソンの平島さんにお願いします。平島さんよろしくお願いします。
Nature’s Call ~あぁ 自然の呼び声
リレートーク9人目(2010年6月1日更新)
INAXの西畑です。
「生物や自然への個人的な想い」ということなので、学生の頃の忘れられない夏の思い出をお話しします。(四半世紀以上も前の話なので写真がほとんどありません。というか撮影している状況ではなかったので・・・悪しからず)
大学に入学した私は、かねてから興味を持っていた山小屋で夏のアルバイトをすることになりました。場所は北アルプスの最奥・黒部川の源流にある標高2700mの稜線上の三俣(みつまた)山荘。徒歩2日圏内に人家はゼロ、という環境です。
山小屋遠景(右下)
山小屋での生活は、登山客の出発に合わせて朝は忙しいものの、昼間は布団干しを終えると昼寝をしたり、雄大な山々を眺めながら高山植物のお花畑の中を散歩ができるほどの余裕はありました。
この喫茶コーナーの雇われマスターでした、背景は槍ヶ岳
お盆を過ぎると登山客もまばらになり、アルバイトの終わりも近づいたある日、山小屋の全員に召集がかかりました。
そこには、かつて黒部の山賊と恐れられた職猟師、小屋番人の「オニサ」がねじり鉢巻で立っており、「今日はオマツリだっ」「ドンチをやるっ」と何やら嬉しそうに息巻いています。どうやら「山小屋の溜まった雲呼を始末する」らしい。一体どのように、そしてどこへ?
「オニサ」が指差すあたりを眺めると稜線上のハイマツがところどころはげている。以前から散歩の時に気にはなっていたのですが、そこに穴を掘って埋めてしまえというのでした。
高山の稜線では土に埋めても微生物による分解が進まず、富栄養化した土にハイマツが再び生えることはありません。これって自然破壊?もしかして犯罪?とは思い至らず、当然のようにその状況ではそのように処理するしかない、とわかったつもりでスコップを握っていました。
この下に埋まっているかも
それからジャンケンで負けて突撃隊員となった私は、上下の雨具と長靴に身をかため、身体中の隙間をガムテープで入念に目張りをしました。そしてトイレの羽目板をはずして暗くて狭い褐色の池に膝まで浸かったのでした。長靴を通して踏んだ時のあのビミョーな感触とあまりの臭いに立ちくらみをおこしながら、2年分の登山客の落し物を必死にスコップで池からかきだし、一輪車に乗せて運び、別の穴に落とすという気が遠くなるような作業を終えました。追い討ちをかけるようにその日の昼食は山盛りの、そう、カレーであったのは忘れ難い思い出、デス・・・。
山小屋の前で 当時の私(左)
それから数年の後、三俣山荘の雲呼は、ヘリコプターで下界に降ろすようになったということです。この原稿を書くにあたって調べたところ、三俣では1シーズンに約3トンが溜まり、これを便槽からバキュームするのに12トンの水をまぜて溶かすのだそうです。さらにそれを下ろすために使うヘリの燃料が4トン!!山を汚さないためにこれだけの手間とエネルギーとコストがかかるということを知る人は少ないのではないでしょうか。
大学を卒業した私は、トイレの会社に入りました。そして時を経て生物多様性に関わることになろうとは。私には今の仕事が、あの夏の日の罪滅ぼしに思えて仕方がないのです。
リレートークの次回は、三井住友海上火災保険株式会社のサム・シェパードこと藤野さんです。では、よろしくお願いいたします。
私たちが食べつくす!?ボルネオの森
リレートーク8人目(2010年4月16日更新)
住友林業緑化の伊藤さんからバトンを受けました、第8走者のサラヤの横山です。
「生き物や自然への個人的な思い」ということで、今回、サラヤが環境保全活動を行っているボルネオの自然についてお話したいと思います。
私は昨年の2月に、当社のヤシノミ洗剤の原料(パーム油)活動地であるボルネオ島へ社員研修で行く機会を得ました。関西空港から、ボルネオ島にある都市コタキナバルまでは約3500km、約5時間のフライトでした。
また、ボルネオ島は世界で3番目に大きい島で、アジア最大の熱帯雨林があり、大量のCO2を吸収できることから、“アジアの肺”とも呼ばれています。この島には223種の哺乳類、358種の鳥類、様々な昆虫や植物等が存在し、まさに生物多様性に飛んだ大地です。
ボルネオ島の位置
大量の雨と日照時間により、細高くそびえ立つボルネオの樹木 川岸まで迫るプランテーション
その島の熱帯雨林が1970年代頃から急激に減少し、パーム油のプランテーション(大規模農園)に変わってきています。その結果、野生生物の生息地である森は分断されて狭くなり、ボルネオ象やオラウータンなどの動植物が、絶滅の危機に瀕しています。)
プランテーションに入るボルネオ象 オラウータンを守ろう!
アブラヤシの実から作る、パーム油とパーム核油
何故、このようなことが起きてしまったのでしょうか?
それはプランテーションで生産されるパーム油の世界的な需要の増加に原因がありました。このパーム油は我々の身近なところで使われています。
主に9割は食用に使用されており、食料の原料欄に「植物油(植物油脂)」と表示されているほとんどのものはパーム油です。また、食用以外には化粧品、自動車の部品、そして洗剤などに使用されています。この洗剤に使われていることが当社の「ヤシノミ洗剤のせいで熱帯雨林が伐採されている」という誤解を招いたのです。この誤解を解くことが、当社のボルネオの環境保全活動を始めるきっかけとなったのです。
いま日本人1人当たりのパーム油の年間使用量は約10?のプランテーションで生産されたパーム油(約4kg)に相当します。ですから、日本人1人が熱帯雨林約10?を破壊して、パーム油を摂取している計算になります。
現地の状況を知らずに恩恵を受ける我々消費者、一方では熱帯雨林の伐採による野生生物の減少、また、現地の人の生活の収入源となるパーム油、このボルネオの現状を目の当たりにして、生活と産業そして環境保全という大きな問題に直面した自分に何が出来るのか?を考えさせられました。
パーム油を否定することは簡単です。しかし、それでは根本的な問題解決になりません。
その結果、私に出来ることはこのボルネオの現状を皆さんに知っていただくことだと思いました。そして、みんなでボルネオの森や自然を守ることを一緒に考えて、行動していく。
人間と野生生物が共生できるようにするために、多くの人々の行動が必要なのです。
人間と野生生物が共生できるように
その一例としてサラヤも支援しているボルネオ保全トラストジャパンのHPをご覧ください。
http://www.bctj.jp/
次のリレートークは、業界トップランナーであり、環境省の「エコ・ファースト」認定企業であるINAXの西畑さんです。よろしくお願いいたします。
ジャングル大帝あらわる(21世紀の里山「トヨタの森」から)
リレートーク7人目(2010年3月15日更新)
インターリスク総研の星野さんからバトンをいただきました。第7走者、住友林業緑化の伊藤です。
JBIB会議参加メンバーも、若い“ゆとり世代”から、“団塊世代”までさまざまですよね。昭和30年代生まれの私たちは、子供の頃ちょうどテレビのカラー放送が始まった世代。なかでも人気があったのが“総天然色番組”(←死語の世界ですね)の「ジャングル大帝」。これは、さまざまな生き物が力を合わせて新しい社会をつくっていこうとするお話です。おっと、これってJBIBっぽい(?)。
弊社で管理をしている、自然とのふれあい施設「トヨタの森」(愛知県豊田市)にも、いろいろな生き物がいます。
世界でここ周辺にしかいない「シデコブシ」、食虫植物「トウカイコモウセンゴケ」世界最小のトンボの一種「ハッチョウトンボ」、水生昆虫でありながら泳ぎが下手な「ヒメタイコウチ」など、愛らしい仲間が湿地にはいっぱい。
ここでは、湿地環境を保全するとともに、地域生態系の質を高め、生物多様性を復元する里山再生に取り組んでいます。
全長2cmしかない“ハッチョウトンボ” 入口。デザインの巣箱にシジュカラが営巣も
食虫植物“トウカイコモウセンゴケ” これも貴重種“クロミノニシゴリ”
2年ほど前から、力を入れているのが「フクロウの森づくり」。
生態系ピラミッドの上位に位置する、この猛禽類も、特に営巣地する洞(うろ)のある大木が少なくなったことで、とても少なくなっています。
「トヨタの森」では手作りの「フクロウの巣箱」を地域住民とともにつくり、森の整備とあわせて巣箱かけを行ってきました。
「トヨタの森」のスタッフです。 インタープリター“スパイダー大原”に抱かれたフクロウ
毎年、半径2kmくらいの縄張りに一つがいの割合で営巣し、1〜2匹の雛が誕生します。今年も二羽が羽化。バンディングを行い、放鳥しました。
フクロウの雛って真っ白なんです。こんなラブリーな雛が、やがて、音もなく(風きり音がしないんです)背後からねずみを襲うようになります。ひひひ・・・。
ジャングル大帝一家も、父親パンジャ、息子レオが白いライオンですよね。生物的にはアルビノです。フクロウは大きくなると、フクロウ本来の色に変わりますが、アルビノはそのまま。実は最近、トヨタの森でもジャングル大帝が現れました!
トヨタの森の“ジャングル大帝”(?) ムササビもいます。名は“チャチャ姫”です。
まっ白な体、足、尾。まさにジャングル大帝…、あ、顔が変(?)。
そう、これはライオンキングではありません。タヌキのぽんぽこ大帝です。
夜な夜なあらわれ、しばしば自動シャッターのセンサーカメラに写ります。
きっと、ジャングル大帝のように、多様で住みよい社会作りを仲間に呼びかけているに違いありません。
今回の連続テーマは「生きものや自然への個人的な想い」
生きものたちの新たな社会づくりに期待をこめ(?)…次にバトンをお渡しします。
次にバトンを引き継いでいただくのは、「世界の(衛生・環境・健康)の向上に貢献」−サラヤ株式会社、の横山さんです。
横山さん、よろしくお願いします。
屋上庭園の歩き方(三井住友海上駿河台ビル)
リレートーク6人目(2010年2月11日更新)
積水ハウスの嶋田さんからバトンを受け取りました、第6走者インターリスク総研(三井住友海上グループ)の星野です。
テーマを何にしようかと迷いましたが、今回は三井住友海上駿河台ビル(以下、駿河台ビル)にある屋上庭園の歩き方についてお話しようと思います。
テレビや雑誌で取り上げられる事が多いのでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、駿河台ビルの屋上庭園の歴史は長く、1984年(当時は大正海上)の竣工時から既に造られていました。資料を調べてみると、当時の経営トップが「地域に溶け込んで、地域の皆さんと一緒に栄える」といった、今で言うCSRにも通じる思想を持ち、その象徴として屋上を緑化したことがわかりました。
この歴史ある駿河台ビル屋上庭園の歩き方を3つのゾーンにわけて紹介します。
三井住友海上駿河台ビル 屋上庭園
ゾーン1:フォレスト
フォレストゾーンにはクスノキやヤマモモ、ツバキ、カリン等さまざまな樹木があります。竣工当時に庭園として適している植栽を選定しているため、在来種以外の樹木も使われていますが、高木や中低木がバランスよく配置されていることで、都会の自然の豊かさを表す指標の一つである野鳥が羽を休めにやってきます。
フォレストゾーン
私も参加している社内のボランティア活動団体「MS愛鳥倶楽部」の観察により、駿河台ビルには都会でよく見られるスズメやヒヨドリ、シジュウカラ、メジロだけでなく、ハヤブサ等の珍しい鳥も飛来しています。
ハヤブサ これまでに観察された野鳥
(MS愛鳥倶楽部観察データより)
また、主に東南アジアに生息するヒメアマツバメが数年にわたり営巣していることも確認されています。ヒメアマツバメの個体数は年々増加傾向にあり、今年はなんと30羽程のヒメアマツバメが観察できました。
ヒメアマツバメ ヒメアマツバメの巣
(撮影:Hobby’s World 代表吉成才丈)
ゾーン2:パーク
パークゾーンにはベンチやテーブルがあり、屋上庭園で一休みできる空間となっています。周囲には三井住友海上社員でアテネ五輪代表でもある女子柔道選手と女子マラソン選手が植樹したオリーブも植わっています。それと同時に、当時の経営層が駿河台の在来種であるスルガダイニオイというサクラの一種である木を植樹しています。
スルガダイニオイは江戸時代、駿河台の武家屋敷の庭にあったことから名づけられたといわれています。駿河台の自生種ではないのですが、この土地に所縁のある木です。
スルガダイニオイはサクラの種類では珍しく花と葉が同時に出そろうのですが、かわいらしく咲く花の姿が健気で、思わず見とれてしまいます。スルガダイニオイは屋上庭園だけでなくビル周辺(道灌通り)の街路樹としても植えられているので、興味のある方は是非、花の咲く春先(4月中旬頃)にお越しください。
パークゾーン
ゾーン3:ガーデン
ガーデンは近隣住民や社員を中心に都心で「農体験」ができる人気スポットです。現在は22区画ありトマトやナス、スイカなどの野菜を育てる人や、きれいな花を育てる人など、自由に利用してもらっています。
ガーデンゾーン
このように、駿河台という都心にありながら自然と触れ合える空間は、普段忘れてしまっている「自然との共生」や「自然の恵みの享受」という感覚を、身をもって思い出させてくれます。
2011年秋には駿河台ビルの向かい側に新本社ビルが建設されるのですが、そこにも新たに緑地が整備される予定となっています。設計時のシミュレーションでは、皇居と上野の不忍池の中間点に位置する駿河台ビル周辺の緑量が増えると、皇居と不忍池を飛ぶ鳥の休憩所としての機能が発揮されるそうです。これにより、今までほとんど観察されていないコゲラもみることができるようになるという結果がでています。
今後ますます多くの野鳥達がこの駿河台を訪れてくれることを期待したいです。
今回の私の話はここまでにしようと思いますが、駿河台ビルの屋上庭園を歩きたくなっていただけたでしょうか。現在は予約制で毎週金曜日にしか開放していない屋上庭園も、新本社ビルが出来上がる頃には一般開放する予定ですので、楽しみにしていてください。
※ビル見学に関する詳細については、下記URLをご覧ください。
http://www.msig.com/csr/environment/afforestation/onlooking/index.html
さて、次の走者は樹木だけでなく、動物や植物についても何でも知っている住友林業緑化の伊藤さんです。とても面白い話題があると聞いています。伊藤さん、お話きかせてください!
<駿河台ビルについて>
竣工 :1984年3月
敷地面積 :11,970m²
建築面積 :5,471m²
屋上緑化施設面積 :2,614m²
地上部の緑化面積 :2,561m²
ライチョウのユウウツ リレートーク5人目(2010年1月15日更新)
積水ハウスの嶋田です。前回、NTTレゾナントの岩口さんが海の話題でしたので私からは山の話題を・・・
私が学生の時の話です。夏休みに富山県の立山自然保護センターに住み込みのアルバイトをしていました。そこは2500メートルの山の上で、それまで高山を登ったことがなかった私は、そこに広がるお花畑や真夏なのにあちこちに残雪の残っている美しい風景に心を奪われてしまいました。眼下に広がる雲海や、そこに太陽が沈むドラマチックな夕焼け。「こんなに素晴らしい風景が日本にあるなんて!」と、感動の毎日でした。
そこでの仕事は、観光客が捨てたゴミを拾い集めたり、遊歩道の柵の整備などでしたが、平気でゴミをポイ捨てしたり高山植物を採る人がいることにびっくりしました。(今はどうなのかわかりませんが。)
ところで皆さんはライチョウを見たことがあるでしょうか。この鳥は天敵などから身を守るために雷雨のような悪天候の時に行動するため「雷鳥」と名付けられたという話があり、見ることが難しいと思っていました。私がこのアルバイトで初めて見たのは30メートルほど先にほんの小さく見えただけでしたが、それだけで大喜びでした。その後何度か見かけることができたのですが、ある日ひとりで山の中で休憩していた時に、ハイマツの茂みの中から突然ライチョウの親子が目の前に現れ、超接近で遭遇したことがありました。私はライチョウが驚かないように動きを止めて自分が風景の一部になるようにしながらその親子を観察することができたのです。親鳥が先頭で雛鳥が5〜6羽くらいで「ピヨピヨ」鳴きながら散歩中で、とても微笑ましいものでした。親鳥はすぐに私の存在に気付いたようだったのですが、意に介することもなく、しばらく私の目の前でえさの花芽をついばんだりしていたのでした。どうも人間を怖がる様子は全くないようでした。
ハイマツの中から現れた親鳥 こちらは雛鳥
後日、ライチョウに関する文献などで詳しく調べると、この鳥は北極圏など北半球の緯度の高い所に住む生き物で、日本のライチョウは世界的にみると驚くほど緯度の低い場所にいることがわかりました。また、本来ライチョウは大変警戒心が強く、外国では近付いて見ることはできないということでした。私が経験した、2、3メートルぐらいの距離まで近づいてもOKだった立山のライチョウとはかなり様子が違うようです。
これは、文化の違い、永い年月をかけて築かれた人とライチョウの関係の違いと言えるようです。すなわち、外国では狩猟の対象といなっていたのに対し、日本では高い山に住む聖なる生き物として位置付けられてきたことの差のようです。
しかし、日本においてもライチョウが生きていくことは大変厳しくなっています。昔のように山を神聖視する風潮は薄れ、高山が観光の対象となってからはその生息域が脅かされるようになりました。夏には色とりどりの高山植物が咲き乱れ、豊かに見える高原も、実は平地と比べると大変生態系の脆弱な土地なのです。そこを棲みかとしている生き物はいつも絶滅の危機に脅かされていると言っても過言ではありません。
厳しい環境で育つ高山植物 短い夏に一斉に種の保存活動を行います
ライチョウはよく氷河期の生き残りと言われますが、日本のライチョウは氷河期が終わっても標高の高いところへ移動し生きのびることができました。しかし、地球の温暖化が進むと、標高の低いところに生息していた他の生き物が上がってきてライチョウの生息域を侵します。これ以上高いところがない日本のライチョウは、行き場がなくなって絶滅してしまう恐れがあるということなのです。現に南アルプスのライチョウは調査の結果、その数が激減しているそうです。日本全体で約3000羽いると推測されているライチョウですが、山脈ごとに生息域が分断されているため、これ以上個々の山域の生息数が少なくなると遺伝子の多様性が維持できなくなり、絶滅の一途をたどると言われています。
日本にも氷河があったことを示すカール地形 STOP!温暖化
私たちはこの貴重な日本のライチョウがトキやコウノトリなどと同じ末路をたどることを阻止しなければいけません。地球温暖化がこれから後、生態系にどのような影響を及ぼすことになるのかは詳らかではありませんが、「どうか生き残ってくれ」と願わずにはいられません。
さて、次にバトンを受け継いでいただくのは、リスクマネジメントのことならここに相談!の、JBIB顧問企業、株式会社インターリスク総研の星野さんです。宜しくお願いいたします。
サンゴのきれいな海に・・・ リレートーク4人目(2009年12月15日更新)
NTTレゾナントの岩口です。
鹿島建設の秋葉さんからバトンを受け継ぎ第4走者を務めます。先日のシルバーウィーク中に久しぶりにお休みをいただきましたので沖縄にダイビングをしに行ってきました。ここ数年、温暖化の影響で白化サンゴ礁が話題になっておりますが、それを通り越した現状を目の当たりにしました。その様子についてご紹介したいと思います。
ここ沖縄は日本でも有数のダイビングスポット。世界中に数々のダイビングスポットはあれど、慶良間諸島のポイントは世界一というダイバーもいるほどの美しいポイントです。それは美しいサンゴ礁の数々。そのまわりを泳ぐ魚たちも織り成し、素晴らしい光景に出会えるのです。実はこの慶良間諸島のポイントは私の初めてのダイビングの場所でもありました。この美しさにダイビングを始めたといっても過言ではありません。
今は人も住んでいるという前島 こちらは座間味島
上の写真を見ていただいてもおわかりのようにきれいなブルーの海と白い砂浜が広がっています。慶良間諸島は第2次世界大戦でも激しい戦地となりました。その戦禍の影響で集団自決という悲しい事実もありました。今でも渡嘉敷島には集団自決の跡地や白玉の塔があり慰霊者を祭っています。
そのような戦地にもなったこの海の色はまさに自然再生の力と呼んでもふさわしいのではないでしょうか。本島とは異なり、この慶良間諸島も大小20ほどの島がありますが、人が住んでいるのは渡嘉敷島、座間味島、阿嘉島、慶留間島、そして前島の5つだけ。しかし、この海の下はどうなっているんでしょうか。そう、サンゴ礁が減ってきているんです。なぜ?
もちろん島民の仕業ではありません。オニヒトデの大量発生や私たちダイバーなどのマナー、島から流れる赤土など様々な要因があるといわれていますが、温暖化の影響というのもまた事実です。
サンゴ礁の上を泳ぐ魚たち この状態のまま保たないと大変なことに・・・
サンゴ礁の話題となると白化現象がよく出てきますが、私が目の当たりにしたのは白化現象を通り越して死滅したサンゴの数々です。あまりに無残さに私はシャッターを押すことを忘れてしまいました。数m前にはきれいなサンゴ礁に魚が群がる姿を見ることができたと思えば、数m先では白化して死滅したサンゴの枝の絨毯が広がっているんです。2年度1度ペースで、ここ慶良間には来ていますが、2年前よりも深刻な状態になっている気がしました。
ダイビングをやらない人にはこの深刻さはあまり伝わらないのかもしれません。しかしながら、サンゴ礁の果たす役割は世界中のどの国に住む人にも密接に関わっています。
CO2の吸収と放出に関しては確固たる結論があるわけではないので、ここでは触れませんが、(1)生物共存機能としての役割、(2)浄化機能としての役割、(3)防災機能としての役割があります(他にも役割はありますが…代表的なものとして…)。
サンゴ礁の周囲には魚をはじめ多くの生物が生息しています。ウニや貝などもそうです。その生物の棲家が破壊されることは私たちの食生活にもゆくゆくは影響を及ぼしてくることをしっかりと自覚しなければいけません。沖縄の海だから、海外の海だから…、私たちには関係ない。そんな思いをもっていませんか?
魚たちの棲家を守ろう こんなにきれいな棲家を奪ってはいけない
サンゴ礁の死滅はその周辺だけでなく、海中の全体の生態系、海岸の生態系にただならぬ変化を及ぼします。この変化が引き金となって悪循環に陥るようなことがあれば、食生活どころではなく、地球システムそのものが崩壊の危険性に直面することをしっかりと受け止める必要があるんです。
ダイバーではないから守るといっても・・・。そんなことはありません。NPOや企業など多くのところがこの問題に取り組んでいます。私たちの生活に関わる海の環境としての役割を改めて考え、そしてみなさんも活動に参加されてみてはいかがでしょうか。
優雅に泳ぐ魚たち 非常に大事な棲家
海の熱帯雨林です 僕の棲家を守ってよ
最後は、私に切実な願いを訴えてくれた海中の生物からのメッセージをお届けして、次にバトンタッチします。
次は、第1回生物多様性日本アワードでも優秀賞を受賞し、「5本の樹」計画を推進され活動を進められている積水ハウスの嶋田さんです。よろしくお願いします。
絶対に守ってくれよ! お願いだ。頼むぞ!
社宅でハニーフラッシュ! リレートーク3人目(2009年11月13日更新)
鹿島建設の秋葉です。
当社は2009年5月から、東京・豊島区の社宅でニホンミツバチの飼育実験を行っています。といっても新規事業として養蜂業を検討しているわけではなく、あくまでも本業である建設業の一環です。都市の生物多様性の回復にミツバチがどう寄与するのかといったデータの収集が目的ですが、もちろん楽しいオマケもあります。
まだまだ残暑厳しい8月25日、社宅在住の親子を招いて一日限りの「みつばちカフェ」を開催しました。社宅に併設されている幼稚園児と親御さんのご理解を得るためもあって定期的に環境教育を行っているもので、今回もミツバチのことをもっと知っていただきつつ、ハチミツも味わっていただこうと計画しました。夏休み中にもかかわらず先生方が全面的に協力してくださいました。
園児が描いたミツバチの絵。 社宅の庭が一日カフェになりました。
おいしいね。
プログラムは、ミツバチの巣箱観察、採蜜体験、そしてハチミツの試食です。
私自身、巣箱を間近に見るのも初めてで、鹿島の技術にハニカムダンパーってあったけど、蜂の巣ってほんとにハニカムのカタチしてるんだーと感動してしまいました。ハニカムのカタチは知っていても本当の蜂の巣をみたことがないなんて、トイレの芳香剤のニオイは知っていても本物のキンモクセイの香りは知らないのと同じではないでしょうか。こういうのを文明が文化を滅ぼすというのかしら、とちと大げさなことも考えてしまいました。
巣箱の表面を覆う白いものはミツロウ。自然派化粧品のお店で、自分で化粧品を作る人のためにミツロウを売っているのは見たことがありますが、自然のものだったのだなとまた納得・・・・。巣箱からこそげ落としたミツロウごとハチミツを口に入れてみると、ロウの味がするわけでもなく、ちょっと口に残りますが、意外にイケル感じ。
巣箱からミツロウをこそげとります。 遠心分離機からハチミツがとろーり。
さて、実はワタシ、今までハチミツって好きじゃなかったんです。なんだか独特の臭みがあってちっともおいしいと思ったことがなく、だいたいハチのカラダにいったん入ったものを食べるなんて虫食べるのと同じだし、野蛮じゃん、だったら植物から取れるメープルシロップのほうが上品だし好きだわ、と思っていました。ところが、メードイン豊島区のしぼりたてハチミツをひとナメしてみたら・・・はちみつのイメージが変わりました。この時期に咲いていた豊島区界隈の花のせいか、単に気分の問題なのか、青臭い感じはなく、さらっとした甘みでした。ハチミツは時期によって色も香りも変わるそうです。たしかにハチミツ専門店にいくといろいろな種類の瓶が並んでいますよね。でも、何千匹何万匹ものミツバチが蜜を集めに出かけて、どうしてアカシアとかミカンとか一種類の花の蜜を集められるのか不思議でしたが、貯蔵係のミツバチは、糖度が高い順に蜜を受け取るのだそうです。糖度が低い蜜を持ってきちゃったハチさんはずっと待たされるらしいです。そうやって蜜の種類が管理されるんですね。
ところで、私は都会育ちで虫は苦手、羽があるのも足がたくさんあるのも全部イヤ。が、当社のミツバチプロジェクト担当者からミツバチの生涯、働きバチや女王蜂の悲哀について熱く語られているうちに、いつのまにか洗脳されていたようです。この日も、ハチが目の前を飛んでいても気にならないどころか「ああ、がんばってお仕事してね、あとでちょっと味見もさせてね」と思うようになっていました。「働きバチさんが一生懸命集めたものを分けていただく」という気分です。でもまだハチノコを食べる勇気はありません・・・。
メードイン社宅の新鮮なハチミツを国産無農薬レモンのスライスとあわせ、ソーダで割った特製ハニーレモンスカッシュは甘いなかにレモンの皮の苦味もあり、残暑を吹き飛ばすさわやかな味でした。
手前味噌ならぬ手前ミツな話題で失礼いたしました。鹿島のニホンミツバチプロジェクトについてはこちらをごらんください
リレートークの次は、環境に関することならなんでもござれの環境gooでおなじみNTTレゾナントの岩口さん、お願いします。
ハニーレモンスカッシュ(奥は面布つきの麦わら帽子)
霊山にしのびよるシカの食害 リレートーク2人目(2009年10月15日更新)
パナソニックの飯田です。
ブラザー工業の伝宝さんからバトンを受け継ぎ、「生物や自然への個人的な想い」というテーマの第2走者を務めます。今回は、今年9月に山登りで訪れた近畿の最高峰八経ヶ岳周辺で見た生態系のバランス崩壊の様子についてご紹介したいと思います。
2009年9月6日、八経ヶ岳山頂。ここは紀伊半島を南北に連なる大峰山脈の北部から中央部にあたる場所。古くから山岳信仰発祥の聖地とされ、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に認定されている場所でもあります。人間による開発が厳格に制限されたこの場所で、それとは別の理由により生態系のバランス崩壊がおこっています。現場の様子は、こんな感じです。
樹木が広範囲に立ち枯れしています。近くで見ると、その惨状に心が痛みます。
なぜこんなことになってしまったのか、その主な理由の一つがシカの食害だということです。地球温暖化の影響で、シカの行動範囲が山頂にまで広がり、冬季の積雪量が減ったことで自然淘汰の数も減少、生息数が増加したシカが樹木の皮まで食べてしまい、立ち枯れ現象を起こしているとのこと。
また、この辺りは国の天然記念物に指定されているオオヤマレンゲの群生地としても知られていますが、これもシカの食害で激減し、今では環境省や自治体により柵が設置され、厳重な保護が行なわれています。
私も下山途中に実際にシカをみかけました。4〜5頭の群れで、向こうが先に私の存在に気づき、あっという間に逃げてしまいましたが、なぜか1頭だけが残って、しばらくの間じっとこちらを見ていました。その時の様子が上の写真です。
北極の氷の減少など、地球温暖化の影響が既に顕在化していることは頭では理解しているつもりですが、日本の自然が大きな影響を受けその姿が変わりつつある現場を見て、改めて大きなショックを感じました。温暖化をくい止める努力に加えて、既に起こりつつある現象への対策が必要です。
ところで、ここまでは問題点に焦点をあてて紹介してきましたが、全体から見れば、この周辺は豊かな自然が残り、人間にとって信仰上の聖地であるばかりでなく、生きものたちにとっても命の営みを繰り広げる聖地であります。最後に、今回の登山の途中で出会った生き物たちの一部を簡単に紹介して、次の方にバトンを渡したいと思います。
次の方は、生物多様性行動指針をいち早く出され、最近ではニホンミツバチプロジェクトなどユニークで先進的な取り組みをされている鹿島建設の秋葉さんです。よろしくお願いします。
トリカブトの蜜を吸いにきたクマ蜂? 山小屋のスズメバチの巣には肝を冷やしました
1800mの高所、池が無くてもカエルが いろいろな鳥をみかけましたが、カメラに
いるんですね 収まってくれたのは彼(彼女?)だけでした
ジャンボタニシ リレートーク1人目(2009年9月28日更新)
ブラザー工業・伝宝です。
JBIBリレートークの栄えある第1回を担当させていただくことになりました。
テーマは「生物や自然への個人的な想い」ということですので今年の夏に参加させていただいた「田んぼの生きもの調査」で出会った生物について書きたいと思います。
2009年7月2日、農林水産省生物多様性戦略検討会委員の方々と共に「田んぼの生きもの調査及び水田魚道視察」なるものに参加させていただきました。場所は愛知県稲沢市祖父江町の田んぼです。
生きもの調査ということでタモ網で田んぼにいる生きものをすくって観察します。
タモ網で生きものをすくうなんて何年ぶりでしょう?おそらく22年ぶりくらいです。
小学生の頃に近所の池で凧糸に煮干を巻きつけてザリガニ釣りをした記憶が甦ってきます。同年代の大半の人の例に漏れずバケツいっぱいにアメリカザリガニ(外来種)を詰め込んでいました。もちろんその頃は外来種なんて言葉は知らず「なんで日本にいるのにアメリカザリガニって名前なんだろう」と思う程度でした。しかしそのアメリカザリガニも小学校低学年の頃は山ほどとれてたのに5,6年生になる頃には随分と捕まえにくくなっていたような気がします。原因が環境の悪化だったのか子供達にとられ過ぎたためだったのかは今となってはわかりませんが。
という訳で、せっかくタモ網を持ったからには22年ぶりにザリガニを捕獲したいと思ったのですが昔に比べて数が減ったのか1匹もザリガニは捕まえれませんでした。では何が捕獲できたかといいますと、カエルとジャンボタニシです。カエルも見るのはかなり久々だったし一言でカエルと言っても種類によっては貴重な生態系の資料となるのですが、今回は何と言ってもジャンボタニシが衝撃でした。見るのも名前を聞くのも生まれて初めてです。しかも大量にいるのです。さらには卵もでかい上にピンクなのです。
ジャンボタニシの卵です 水槽に張り付いたジャンボタニシ
田んぼでもとても目立っていました 隣にいるカエルと比べてもでかいです
このジャンボタニシ、学名はスクミリンゴガイといい出身地は南アメリカ・ラプラタ川流域です。食用として1981年に台湾から日本に持ち込まれたものの需要もなく採算が取れないため廃棄されてしまいました。その中から逸出したものが野生化して現在のように増えてしまったとのことです。生物多様性の外来種を語る上で見本になれそうな経歴の持ち主ですね。そして外来種の名にふさわしく(?)水田に生息しイネを食害することで問題にもなっています。
田んぼをくるっと見回すとイネの先っちょや用水路のコンクリートのところにピンクの卵がたくさんついています。水中では孵化できないためこのような目立つところに産み付けられてしまうそうです。
子供の頃に見たことがなかったのはまだ今のように広まる前だったからなのでしょう。これからは田んぼの近くを通る時、思わずピンクの卵を探してしまいそうです。
この時の生きもの調査で、私はカエルとジャンボタニシしか捕獲できませんでしたが、他の班ではドジョウやフナ、ザリガニも捕まえていました。
集まった多くの生きものを見ているとそれだけでなんだか楽しくなってきます。こうやって単純に「楽しい」という感情になれることも生態系サービスのひとつですね。
生物多様性という言葉は難しいですが、生態系サービスから考えるとその重要性を実感できる場面が多いのではないかと思います。
と、無理矢理まとめたところで次の方にバトンをお渡しさせていただきます。
次は、「エコアイディア」で多くの環境への取り組みを行っているパナソニック株式会社の飯田さんです。
飯田さん、よろしくお願いします。